9章 印刷/公開のきほん

いつか何かの役に立つかも?印刷工程・色・紙・製本の基礎知識

POINT

  • 「印刷」の基礎知識を知れば、見積書の項目が読み解ける
  • 印刷用紙は、数千種類もある。自社に合う用紙を考えてみよう
  • 「製本」方法によって、社内報にひと工夫ができる

今回の社内報の見積書は・・・これか。

―――今まで気にしたことなかったけど、この「4c」とか「90kg」ってなんだろう? 全部で90kgになるってこと?

4cは4色カラーのこと!90kgは紙の厚さを表してるのよ。

????????

そもそも印刷全般の話からすると・・・

なるほど~~(あんま興味はないけど)

社内報担当者としては、入稿が終わる(校了データが印刷会社に渡ること)とちょっとホッとしますよね。
あとは印刷会社からの納品を待てばいい~と気が楽に。

入稿後は印刷会社におまかせしておけば問題ない、とはいえ印刷知識を持っておくと役立つこともあるかもしれません。

<こんな時に>
●印刷会社の人とのやり取りがスムーズになる
●見積書に記載してある謎の表記が理解できる
●社内報リニューアルの時に、ページ数や用紙など検討の幅が広がる
●社内報をひと工夫したいときのアイデアにつながる

ここでは、基本的な印刷知識についてお伝えしていきます。

1.印刷見積書の素朴な疑問

印刷の見積書に、次のような記載を見かけたことはありませんか?

●4c/4c、4c/1c、2c/2c → 「c」って何?
●90kgベース → 何が90kg?
●中綴じ → どんなやつ?

これらは印刷物の仕様を表す専門用語です。

●4c、1c → 「c」はColorのことです。
4cとは、4色印刷=カラー印刷、1cは1色印刷(モノクロや特色1色など)を表しています。

●90kgベース → 用紙の厚さのことです。用紙を1,000枚重ねて測ったときの重さを表しています。
※詳細は下記の「印象を左右する「用紙」について」を参照

●中綴じ → 冊子の中央をホチキスで綴じてあるものです。

色・用紙・製本については、次から解説していきます。

2.印刷の基礎知識

色のしくみ

カラーの印刷物は、4色の点が集まってさまざまな色を表現しています。

みなさんの手元にある社内報などの印刷物をルーペ(虫眼鏡)などでのぞいてみると小さい点が集まっているのが見えるはずです。

その4色とは

シアン→C

マゼンダ→M

イエロー→Y

●スミ(ブラック)→K

これらをあわせてCMYK(シーエムワイケイ)と呼びます。
カラーの印刷物に対して、単色の印刷物はその色のインキで印刷します。
CMYK以外のインキのことは「特色」と呼びます。

社内報でよく使う印刷方式(オフセット印刷とオンデマンド印刷)

企業で制作される社内報の多くは「オフセット印刷」か「オンデマンド印刷」、どちらかの印刷方法で印刷されています。(うちは活版印刷です!という社内報があったら見てみたい)

それぞれの特徴は次の通りです。

※印刷会社によって対応サイズは異なります。

知っておきたい印刷工程

①入稿
校了データをデザイナーから印刷会社に渡す工程のことです。
デザインデータ、確認用の出力紙をセットにして渡しましょう。

<ここから先の工程は印刷会社の作業になります>

②面付け
入稿されたデザインデータに不備がないか確認し、印刷用データ(RGBからCMYK)に変換します。各ページのデータを印刷する状態に合わせて配置していきます。

③CTP(刷版)
面付された印刷用データをアルミの板に焼き付ける工程で、刷版(サッパン)とも呼ばれます。インキを乗せる土台となる「はんこ」をつくる部分です。4色カラー印刷の場合はC版・M版・Y版・K版の4枚に分かれます。
オンデマンド印刷の場合はCTPの工程はありません。

④印刷
CTP(刷版)を印刷機にセットして、印刷していきます。インキの量や刷る位置などを0.1mm単位で調整しながらすすめます。

⑤製本
印刷された紙を、折って、綴じて、切って、冊子型にしていきます。

⑥梱包
仕上がった印刷物をクラフト紙などに包み、ダンボールに詰めます。1包みを何部にまとめるか、1つのダンボールに何冊入れるのか、希望があれば事前に伝えておくとよいでしょう。

完成!

3.印象を左右する「用紙」について

用紙の種類

印刷に使われる用紙銘柄と厚さは何千種類もあります(正確に何種類あるかはわからないそうです)。
そのなかで社内報担当者が覚えておきたい用紙の特徴をお伝えします。

●マットコート紙(おすすめNo.1)
コート紙の艶を消しマット感がある用紙。光の反射が少ないため、長時間見ても目が疲れにくく文字を読むことに適しています。4色フルカラー印刷に適しています。

●コート紙(おすすめNo.2)
ツルツル・ピカピカした用紙。表面が平滑で4色フルカラー印刷に適しています。
写真を大きく配置するような誌面に向いています。

●上質紙
いわゆるコピー用紙のような紙。インキがにじみやすいため4色フルカラー印刷には不向き。黒1色や紺1色などの単色印刷に適しています。

用紙の厚さ

用紙1枚は0.1mm以下の厚さのものが多く、測ることが難しいため、全紙(模造紙ぐらいある、元の大きさの紙)を1,000枚重ねたときのkg数で厚みを表しています。

社内報に使われる用紙の厚さは、四六判サイズ(788mm×1091mm)の70kg、90kg、110kgくらいが中心です。
ページ数や製本方法によって最適な厚さは異なりますので、迷った時は印刷会社に確認しましょう。

4.社内報の「製本」でひと工夫

●中綴じ
冊子の中央をホチキスの針などで固定する製本方法
8~32ページくらいの社内報で一般的によく見かける綴じ方です。

●無線綴じ
中面ページの背に糊を塗り、表紙で包んで貼り付ける製本方法
ページ数が多い、ホチキスの針を使いたくない場合などで見かける綴じ方です。

●二つ折り
紙面を半分に折るだけの製本方法
4ページの社内報で見かける綴じ方です。

その他にも社内報で利用できる製本方法はいくつかあります。

●+2ページの「片観音開き」
社内報は中綴じ製本で作られている場合が多いです。
中綴じ製本の場合、印刷の都合上4ページ単位で増減しますが、「片観音開き」という方法であれば、2ページ増やすことができます。

●インパクト重視、年表などに使える「両観音開き」
観音開き(両観音開き)にすると4ページつながった誌面になります。会社の沿革を振り返る特集などでは一覧性があっておすすめです。

●アイデア次第で自由自在の「型抜き」
アイデア次第でさまざまなことができるといえば、「型抜き」も面白い方法です。表紙に空いた穴から中身がちょっとだけ見えることで、読者の興味を引くきっかけにすることもできるでしょう。 型抜きの型は☆型やハート型など、オリジナルで作ることが可能です。



印刷知識を少し知っていると、印刷会社の担当者との意思疎通がスムーズになるだけでなく、社内報リニューアルや特別号をつくるときなどに冊子の選択肢が広がります。

内容に合わせたよりよい印刷方法を探してみてくださいね。